今年、ある方への寒中見舞い葉書に、こんなことを書き添えた。
“読書二刀流に挑戦中”
「読書二刀流」は私の勝手な表現だが、この葉書の受取人はたいそう読書愛にあふれる方で、ずいぶん前のことになるが、この方から聞いた、自宅で読む本とは別に、移動中に読むための本を鞄に忍ばせているという話が、ずっと心に残っていたのだった。
その話を聞いて、すごいなと驚いた。と同時に、自分にはできないとも思った。
それがここへ来て、ちょっと試してみようかという気になったのだ。
実際にやってみると、想像していたような困難はなく、意外にできるものだなと感心すらした。
どうしてできないと思ったのだろうと、少し考えてみた。
不器用である、それほど熱心な読書家というわけでもない……
いろいろ理由はありそうな気はするが、一冊読み終えたら次の本を読むという自分ルールがあることに、はたと気づいた。
こだわりという結び目が一つ解けると、ほかの結び目へも意識が向いていった。
本を一冊読み通すことは立派なことだと思うけれども、読んでみて興味が湧かなければ、その本から離れてもいい。そしてまた戻るのも、戻らないのも自由。縁があれば、またしかるべきタイミングでその本を手に取ることもあるだろう……
年齢を重ねてきて、読むスピードも内容を理解するのもゆっくりになり、本に触れる時間を取るのも難しかったりするが、思い込みやこだわり、自分の中のルールといった枠をはみ出したことで、身軽でより自由な読書をゆるゆると楽しんでいる。