2021年もコロナの話題が尽きない一年でした。
私たちヒトの側は、緊急事態宣言やワクチンの開発などによってなんとかコロナを抑えようと必死ですが、コロナの側はコロナの側で、姿形を変えていきながらスルリとヒトの目をかいくぐって生き残ろうとしているように感じます。
そんなヒトとコロナとの知恵比べ・我慢比べの中、2度の公開延期の憂き目を見た「鹿の王」というアニメの映画がついに2022年2月4日に公開となるようです(もしかしたら3度目もあるかも…)。原作は「精霊の守り人」で有名な上橋菜穂子さんです(文化人類学者でもありますね)。
2014年9月に国際アンデルセン賞作家賞を受賞した後の第1作として発表された作品で、2015年には「本屋大賞」と「医療小説大賞」を受賞しているので、すでに触れたことのある方も多いのではないでしょうか(普段小説を読まない私は全く知らず、2021年の8月頃でしょうか、たまたま近所の本屋さんにポスターが貼ってあるのを見かけ、興味を持ったのがきっかけでした…)。
この物語は、「黒狼熱(ミッツァル)」と呼ばれる感染症(私たちの世界ではウイルスにあたると思います)を中心に進んで行きます。
このミッツァルという病は、コロナとは異なり、人から人への感染はしません。ですが、致死率がとても高く、特効薬もなく、コロナのように人の身体の中で姿を変えながら生き残ろうとする、まるでヒトをあざ笑うかのような恐ろしい存在です。
今から7年前に描かれたこのミッツァルという感染症の存在する世界は、私に、自分自身がおよそその内側までも「自分」だけでは完結していないという純粋な事実を突きつけました。
それは、今日においては少し生々しい恐怖でした。
ですが同時に、誰しもが他者とのつながりの中で成立しているという優しさに気づくことのできる体験でもありました。
この物語には、コロナと共にある私たちの今をも超えていく普遍性があるように感じます。
「それで結局、『鹿の王』ってなんのことなの?」と思った方はぜひ読んでみてください。
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請求記号:913.6||U 36||1 図書ID:1327629
請求記号:913.6||U 36||2 図書ID:1327630