私がこの日本語を最初に聞いた時は、かなりの違和感を覚えました。
敬意を持つ人がする行為を「安全に」をつけて言い表したいとき、「Aさんは車を安全に運転なさいました」など、行為自体に尊敬表現をつけるのが一般的で、「ご安全に運転」とは言わないだろう、と。
ところが、機械メーカーに勤務している姉の反応は、全く異なりました。「ご安全に」は、彼女の会社を含めた製造業では日常的に使用されており、耳馴染みがある言葉だと言うのです。ついでに、会社の工場での正しい?使い方を教えてくれました。
- 作業前に集まる
- 代表者の「かまえて!」の号令に合わせて、全員が左手を腰に構える
- 代表者が確認を要するチェックポイントを言ったら、全員が右手で指差し確認し、「良し!」と答える。これを3つのポイントについて行う。
(日常生活での例え:ガスの火元「良し!」→水道栓「良し!」→戸締り「良し!」) - 最後に代表者が「今日もご安全に!」と唱える
姉はオフィスワーカーのため、自身が上述のような使い方をすることは多くないものの、4.の「ご安全に」は、職種を問わずちょっとした会話にも登場する共通表現とのことでした。
こうした話を聞き、「ご安全に」には元来、現場を共にする人と危険やリスクに関する意識を共有化しようとする意図があり、そして相手に対する敬意や安全への願いが多分に込められていると想像しています。「どうか気を付けて安全に作業なさってください」が「ご安全に」に凝縮されている。そう思うと、日本語としての誤用云々はさておき、この言葉が製造業に流通している理由がわかるような気がします。
ものづくり 人づくり 未来づくり を掲げる名工大で学ぶ学生の皆さん、様々な試薬や装置を使った実験に携わる機会がある方もおられると思います。
今日もご安全に!
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このコラム執筆を契機に、工場現場での作業安全に関する本に挑戦してみました。選んだのは、初心者らしく『トコトンやさしいトヨタ式作業安全の本』。現場から進める安全管理の方法を、分かりやすくコンパクトに知ることができます。本書で紹介されている手法は、特に工場等にシチュエーションを限定しなくても気づきを得られるということが分かった点も、自分にとって収穫でした。
なお、図書館には「トコトンやさしい」から始まる本書と同一シリーズの図書を数多く所蔵しています。OPACで検索して、手に取ってみてくださいね。
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請求記号:509.8||I 76 図書ID:1336521