名古屋工業大学図書館報「@Library」

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求められる人材に<図書館からのメッセージ>

図書館長 内匠 逸

図書館長 内匠 逸


  新しい年度が始まりました。新しい元号も決まりました。これまでになく新鮮な雰囲気に包まれる1年間を感じます。第4次産業革命 (Industrie 4.0) という言葉が使われ始めて10年。ヨーロッパでは,2020年を目標に産業構造転換の多額投資が続いています。その先にある新しい社会は,政府が提唱する “サイバー空間と物理的空間とが調和した超スマート社会 (Society 5.0)”です。さらにその先,2045年頃には人工知能が人間の脳を超える技術的特異点(シンギュラリティ)に達するといわれています。漫然とシンギュラリティを迎えると,そのインパクトによって社会が崩壊しかねませんから,人間主導で創る超スマート社会でインパクトを軽く受け,転じて人類の成熟に繋げることが大切です。2020年の東京オリンピックはこの激動時代の始点です。我々の生き方や価値観が激変してゆくことは間違いありません。
 日本国内では高齢化や人手不足などが社会問題となっているので,それらを解決するためにサイバー空間と物理的空間とを調和させ最適化する必要があるという理屈は理解できそうです。知能ロボットができれば国内の多くの課題が解決します。いっぽうグローバルな視点で超スマート社会を理解しようとしてもイメージはおぼろげです。ただ,答えに繋がる糸口は2015年国連サミットで採択された17の目標(SDGs : Sustainable Development Goals)にありそうです。SDGsには具体的な169のターゲットも設定されていて,これら全てを達成するための改革と協調の努力がグローバルな超スマート社会を創ると考えています。
 これからスタートする社会の大転換期にむけて,私たちは何を準備したらよいでしょう。この数年よく耳にした,IoT,ビッグデータ,サイバーセキュリティ,データサイエンスなどのキャッチーな言葉は間もなくバズワードと化します。サイバー空間と調和した社会は極めて多様で変化の激しいものになると言われます。成功が約束された道はありません。答えの存在が保証された問題は殆どありません。不確かな未来において,初めて直面する問題に対応する能力が私たちに求められます。また,国外のみならず国内の企業においても,もはや教育・能力開発のためにコストを割く余裕がなくなっているので,我々は自ら考え,自らを鍛える自己成長力を身に付けなくてはなりません。
 図書館は膨大な知識を収蔵し,閲覧に供しています。それだけでなく,今はグループワークの場も提供しています。最適解の不明な課題に対して一つの準最適解を見出す能力の開発には,豊富な知識と最新の情報に基づく議論,試行錯誤,グループワークを経験することが近道です。図書館はそのための支援を継続・発展させていますので,積極的に足を運んで頂きご利用くださいますようお待ちしております。