野口英世…ではなくて、その9つ年上の夏目漱石の作品を紹介します。
(千円札、10年くらい前までは夏目漱石だったんですよ!
平成生まれの学生さん、知ってますか!?)
漱石のイメージといえば「文豪」ですね。なんだか頑固で気難しい…。
漱石はそんな自分をモデルにして(していると言われている)
『道草』という小説を書いています。
個人的に印象深いのは、
以下の漱石(小説の中では「健三」)と青年のやり取りです。
「『しかし他事じゃないね君。
その実僕も青春時代を全く牢獄の裡で暮したのだから』
青年は驚ろいた顔をした。
『牢獄とは何です』
『学校さ、それから図書館さ。考えると両方ともまあ牢獄のようなものだね』
青年は答えなかった。
『しかし僕がもし長い間の牢獄生活をつづけなければ、
今日の僕は決して世の中に存在していないんだから仕方がない』
健三の調子は半ば弁解的であった。
半ば自嘲的であった。
過去の牢獄生活の上に現在の自分を築き上げた彼は、
その現在の自分の上に、是非とも未来の自分を築き上げなければならなかった。
それが彼の方針であった。
そうして彼から見ると正しい方針に違なかった。
けれどもその方針によって前へ進んで行くのが、
この時の彼には徒に老ゆるという結果より外に
何物をも持ち来さないように見えた。
『学問ばかりして死んでしまっても人間は詰らないね』
『そんな事はありません』」
夏目漱石『道草』青空文庫 より
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/783_14967.html
頑固で気難しい…どころじゃなく、自信がもてずに不安に苛まれています…。
最後の青年の言葉は、そう思いたいという漱石自身の言葉のようにも感じますね。
学問によって磨き鍛え上げてきた鎧も、実際の世間を前にして
紙っペラみたいに感じてしまうことが多かったのかもしれません。
学生のみなさんには学問の道をひたすら突き進み、
野口英世のような業績をあげていただきたいものですが、
たまには夏目漱石などのベタな小説を手にして道草をしてみてください。
たぶん答えは見つかりませんし、もやもやが残るだけかもしれません…。
ですが、なにかココロが揺らぐかもしれません。
きっとその経験は、自分や自分のまわりの世界を見る目を変えてくれるはずです。
ちなみに、漱石は今年2016年で没後100年ということらしく、
アンドロイド化するようです!?
漱石アンドロイド 特設サイト - 二松學舍大学:http://www.nishogakusha-u.ac.jp/android/