名古屋工業大学図書館報「@Library」

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学生の「おすすめ図書」

f:id:nitlib:20161205115455j:plain(社会工学専攻/博士前期課程1年)

融けるデザイン:ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論
渡邊恵太著 ビー・エヌ・エヌ新社 2015.1
請求記号: 007.6||W 46 図書ID: 1328059

「道具を手足のように使える」
インターフェイスデザインを極める上で、目指すべきはこの状態である。
一般的にインターフェイスデザインは、
ブラウザやアプリ画面の中のUI設計やその使いやすさと思われがちだが、
物的な道具、例えば鉛筆や櫛であっても考えるべき対象になる。
是非デザイナー、エンジニアを目指す方が手に取り、
人々の生活に自然に融け込むような体験のある世界を目指すきっかけに
なってほしい。

ゴッホとゴーギャン展

「ゴッホとゴーギャン展」が今東京で開催されています。
1月からは、名古屋でも開催されますね。
ゴッホとゴーギャン展:http://www.g-g2016.com/aichi/

ゴッホとゴーギャン、
二人を同時に取り上げる展覧会は今回初めて日本で開催されたそうです。

ゴッホとゴーギャンが約2ヶ月、
南フランスのアルルで共同生活を送った話は有名ですので、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
共同生活の末、ゴッホが自分の耳を切り落とした話は特に有名ですね。
そんな二人の交流や関係性に焦点を当てながら、
ゴッホとゴーギャンの絵画が時系列で展示されているようです。

東京会場で「ゴッホとゴーギャン展」を見に行った方たちの感想で、
「1本の映画を見たようだった」というような言葉を見かけました。
二人の交流から、ゴッホとゴーギャンそれぞれの人間性が透けて見えることで、
彼らに親近感を抱いたり、感情移入しやすいのかもしれません。

画家の周りの人間との関わりや、生い立ち、生きた時代・環境等を知ることで、
作品やその画家自身に、
より面白みや親近感を感じることができるかもしれません。
ゴッホやゴーギャンだけでなく、
名工大の図書館にもそうした画家にまつわる本がありますので、
興味のある画家について一度読んでみると新しい発見があって
面白いかもしれませんね。

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ゴッホとゴーギャンについては、例えばこんな本があります。
その他にも名工大OPACで検索してみてください。
ゴッホの手紙 / ゴッホ [著] ; エミル・ベルナール編 ; 硲伊之助訳
ゴッホ星への旅 / 藤村信著
ゴーギャンの手紙 / ゴーギャン〔著〕 ; 東珠樹訳編
オヴィリ : 一野蛮人の記録 / ゴーギャン [著] ; ダニエル・ゲラン編 ; 岡谷公二訳

歴史本

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歴史や歴史ものが好きです。
歴史おたくを名乗るほど深くも広くもないつまみ喰い嗜好ですが、
背景の知識があると、
映画・ドラマ・小説・まんが・ゲーム・アニメや
ニュース、旅先での出会いに、ちょっとだけ色が付いて面白いです。
歴史を横軸で想像することも楽しいです。
中国で三国志をやっていた頃は日本だと卑弥呼がいた時代か とか、
日本が元寇でバタバタしていた頃
西の方でも東ヨーロッパやイスラムの国々が同じように
モンゴルを相手にバタバタしていたのか とか、
わくわくしませんか?

一時期、塩野七生に大嵌りしてました。
彼女の著作『ローマ人の物語 全15巻』では、
古代ローマの誕生から滅亡までが描かれています。
勢いのある時期、繁栄の時代、滅びへと歩む日々について、
著者の主観に時には納得共感し時には強引だろうとつっこみながら、
15年にわたる大作(1年に1冊刊行)でも途中でダレない内容に魅せられて、
夢中で読みました。

名工大にも、歴史に関する学術書やよみもの、小説があります。
日常の彩りや刺激に、手に取ってみませんか。
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図書館カウンター前にて、「歴史を楽しむ」と題して図書を展示しています。
ぜひ、ご覧ください。

学生の「おすすめ図書」

f:id:nitlib:20161125115217j:plain(未来材料創成工学専攻/博士前期課程2年)

陰翳礼讃
谷崎潤一郎著 中央公論社 1995.9
請求記号:914.6||Ta 88 図書ID:6001149

国語の授業で知り、大学に入ってから改めて読んだ本です。
時代背景が違うためすべてに納得は出来ないものの、
著者が熱く語る伝統建築やデザインの魅力には、
不思議な説得力があります。
中でもおすすめの章は「陰翳礼讃」と「厠のいろいろ」です。
古いトイレは暗くて怖いですが、
これを読めばそこに美を見出す感性を養えるかもしれません。
すぐに読めるので忙しい人にもおすすめします。

教職員のおすすめ図書

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塩塚 理仁先生(生命・応用化学教育類ソフトマテリアル分野/准教授)

遅い光 (スローライト) と魔法の透明マント:
クローキング、テレポーテーション、メタマテリアルを実現した光の科学の最先端

シドニー・パーコウィッツ著 ; 阪本芳久訳 草思社  2014.5
請求記号:425||P 42 図書ID:1330059

英題は「SLOW LIGHT」ですが、
日本語タイトルには「魔法の透明マント」を訳者が加えています。
透明マントは、多くの大学生がハリーポッターを読んだ(見た)世代になり、
興味を持ってもらうための工夫でしょうか。
この本は、光学迷彩やテレポーテーションというSFの中の話と
物理の最先端研究との関係をまじめに扱っているところが面白いと思います。
数式がないメタマテリアルの入門書としてもお勧めです。

学生の「おすすめ図書」

f:id:nitlib:20161114091535j:plain(情報工学専攻/博士前期課程2年)

夜は短し歩けよ乙女
森見登美彦著 角川書店  2006.11
請求記号:913.6||Mo 54 図書ID:1300994

論文や教科書など、現代文を読むことに疲れた方に非常にお勧めです。

この本は全編通して、古語風なとても綺麗な日本語で構成されています。

また、作者が学生時代に過ごした京都の情景がリアルに描かれており、

まるで自分が主人公となり京都の町を闊歩しているよう錯覚させてくれます。

忙しい日常に疲れた貴方。

この本でひと時の京都旅行を楽しんでみませんか?

千円札のあの人の『道草』

野口英世…ではなくて、その9つ年上の夏目漱石の作品を紹介します。
(千円札、10年くらい前までは夏目漱石だったんですよ!
平成生まれの学生さん、知ってますか!?)

漱石のイメージといえば「文豪」ですね。なんだか頑固で気難しい…。
漱石はそんな自分をモデルにして(していると言われている)
道草』という小説を書いています。

個人的に印象深いのは、
以下の漱石(小説の中では「健三」)と青年のやり取りです。


「『しかし他事じゃないね君。
 その実僕も青春時代を全く牢獄の裡で暮したのだから』
 青年は驚ろいた顔をした。
 『牢獄とは何です』
 『学校さ、それから図書館さ。考えると両方ともまあ牢獄のようなものだね』
 青年は答えなかった。
 『しかし僕がもし長い間の牢獄生活をつづけなければ、
 今日の僕は決して世の中に存在していないんだから仕方がない』
 健三の調子は半ば弁解的であった。
 半ば自嘲的であった。
 過去の牢獄生活の上に現在の自分を築き上げた彼は、
 その現在の自分の上に、是非とも未来の自分を築き上げなければならなかった。
 それが彼の方針であった。
 そうして彼から見ると正しい方針に違なかった。
 けれどもその方針によって前へ進んで行くのが、
 この時の彼には徒に老ゆるという結果より外に
 何物をも持ち来さないように見えた。
 『学問ばかりして死んでしまっても人間は詰らないね』
 『そんな事はありません』」
 夏目漱石『道草』青空文庫 より
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/783_14967.html


頑固で気難しい…どころじゃなく、自信がもてずに不安に苛まれています…。
最後の青年の言葉は、そう思いたいという漱石自身の言葉のようにも感じますね。
学問によって磨き鍛え上げてきた鎧も、実際の世間を前にして
紙っペラみたいに感じてしまうことが多かったのかもしれません。

学生のみなさんには学問の道をひたすら突き進み、
野口英世のような業績をあげていただきたいものですが、
たまには夏目漱石などのベタな小説を手にして道草をしてみてください。
たぶん答えは見つかりませんし、もやもやが残るだけかもしれません…。
ですが、なにかココロが揺らぐかもしれません。
きっとその経験は、自分や自分のまわりの世界を見る目を変えてくれるはずです。

ちなみに、漱石は今年2016年で没後100年ということらしく、
アンドロイド化するようです!?

漱石アンドロイド 特設サイト - 二松學舍大学http://www.nishogakusha-u.ac.jp/android/