名古屋工業大学図書館報「@Library」

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バランス

  今や電子機器が全世代に浸透していますが、その昔、努力と根性でひたむきに頑張る精神がもてはやされたアナログ時代がありました。その美学に励まされて(ある意味あおられて)育った人々が、軽いタッチで検索・選択して進む今の社会に、多少の不安を感じたとしても不思議ではありません。
 
 例えば、アジアのとある歴史家は、言語と文化と時代の壁を乗り越えて膨大な量の古い書物や資料にあたり、インタビュイーとは信頼関係を築き、彼らのプライバシーと社会的な弱さにも配慮しつつ対話し、綿密に出来事の裏付けをとるという作業を積み重ねています。それは単に過去を記録するためではなく、人間性の追求であり、社会を読み解き、未来へ向けた提言とも言えます。歴史が好きな人でなくとも、歴史家のその姿勢には心動かされるものがあります。
 
    生活の中で物事を効率的にし、手軽にし、わかりやすくすることは始終求められることですが、それらは常に良いわけではありません。少なくとも、「効率的で、手軽で、わかりやすい」ことに慣れて甘んじてしまっては、突然現れる非日常の事象に対して十分対応できません。時間や手間を掛けることに背を向けていては本質を捉えきれないからです。
 
 意識の持ち方次第で、育つ感性が変わってきます。食べ過ぎたら太り、偏れば病気になる食事と同様に、青年期の読書にはバランスが必要です。それはいろいろなジャンルをという意味ではなく、自分の生き方を整える意味を込めたバランスです。面倒を承知で、いつもより少し厚めの本を手に取ってみませんか。借りるには重い本も電子ブックなら大丈夫!秋の夜長に良い本との出会いがありますように。
 

読書の秋