名古屋工業大学附属図書館報「@Library」

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私の夏休み (オススメ図書)


夏季休暇の合間にポッコリ時間が空いたので2週間ほど前に買った文庫本2冊を読み始めた。
私の所属する部署は大学図書館の事務室の中にあるため頻繁に図書に関する情報を回覧する。
今回偶々、書籍案内に関する雑誌の中に「学生さんに読ませたい本」ということで
あらすじと簡単な書評が添えられている回覧物が手元に来た時に、その一冊にとても心が惹かれた。
自分のデスクにあるメモ用紙に、その本のタイトルをひかえ休憩時間にAmazonで検索したところ
usedのところに「1冊1円」で売りに出されていた。送料を支払っても新品を購入するよりは遥かに安い。
そんな経緯があって今回手にした本は宮本輝さんの「草原の椅子」というタイトルだった。
登場人物の人間的な魅力は言葉には尽くせなく読めば読むほどに物語に惹きこまれていく。
主人公の2人の年齢が自分とほぼ同じということ、彼らのシチュエーションがカメラにかかわるということ、
そしてキーパーソンの一人である登場人物の名前に私の名前の漢字一文字が使われているということ、
それ以外にも、読み進めていくうちに更に私とのかかわりが深く現れてきて、
あまりにも驚くべき偶然に、こういった(本との)出会いもあるものなのだと思わずにはいられなかった。
主人公2人の放つ言葉の一言一言が、まるで自分の気持ちを代弁しているかのようで可笑しかった。
その中で、とても胸に染みたフレーズがある。
主人公2人が写真集を作ろうということになり、そのテーマが
「楽しいもの、幸福に感じるもの、気持ちのいいもの、荘厳なもの、笑いがあるもの、
それらを中心として人間の心について考えてしまうもの」という行(くだり)だ。
近頃の私は漫然とカメラのシャッターを押していて
なぜいつまで経っても自分らしい一枚が撮れないのかと思い悩んでいた。
そんな私にとって、頭から水をかけられたようなフレーズだった。
「撮る」という行為そのものが「撮りたい」という気持ちを忘れて先走りしていることを
そっと教えてくれたように思えて…。
一冊の本との出会いが、思わぬ方向へ自分を引っ張り上げ
そして、色々なことをもう少し頑張ってみようという気にさせてくれた。
この本との出会いが5日間の夏季休暇を思いのほか有意義にしてくれたことは
もはや言うまでもないことである。