名古屋工業大学図書館報「@Library」

「@Library」は、名古屋工業大学図書館のブログ版図書館報です。詳細は、http://profile.hatena.ne.jp/nitlib/ をご覧ください。

館長交代(1) 研究の楽しみと図書館

7月1日付で附属図書館長が交代いたしました。
まずは杉山前館長に、図書館との関わり方について伺いました。

                                                                                                                                                                • -

研究の楽しみと図書館                 前附属図書館長 杉山勝
 6月中旬にイタリアで開催された国際会議に出席しました。
場所は南イタリアで、ブーツの形をした国土のかかと部分にある静かな港町です。
気温は名古屋とそれほど変わりませんでしたが、湿度は低く快適でした。空の青や
緑がかった地中海の青も、さすがイタリアと感じられ印象的でした。
その国際会議で、有望な若手研究者に会うことができましたが、また、何人かの著名な
年長の研究者とも会いました。年長の研究者とは、毎日、研究会場やホテルのレストランで、
研究に関する話やそれ以外の話をすることができました。
夜には彼らと、ゆっくりと食事をしながら、遅くまでおしゃべりをしていました。
こういうゆったりとした時間が、私は大好きです。
大震災の後でしたから、必ずといっていいほど、今の日本の状況を尋ねられました。
そして、彼らが示す心のこもった同情に感謝するとともに勇気づけられました。
今後の世界のエネルギー政策がどうあるべきかについても話が及びました。

 これら年長の研究者のほとんどとは旧知の間柄でしたが、彼らと初めて会う以前から、彼らの論文や
著書を通して彼らの名前を知っていました。中には私が学生のときに彼らの卓越した論文内容に触れ、
その時から敬意を抱いていた人もいます。
今でも、学生時代、その論文を読んだ当時の印象や、図書館で彼らの著作を発見した時の情景などを、
その他もろもろのことと共に鮮明に思い出すことができます。
その彼らと、直接会うことができる実に幸せな機会を国際会議は与えてくれます。
 もしも彼らに会う以前にこのような準備がなく、突然彼らと会ってみたとしても、多分、それほど大きな
感動はなかったでありましょう。そういえば、初めて彼らと会った時も、私にとって、初対面とは思えない
不思議な感覚であったことを思い出します。
私にいわせれば、著作を通じて知っていた研究者と、ある時、ある意味で必然的に、会う機会をもつことが
できるということは、研究の楽しみのうちの大きな一つの要素のように思います。
いうまでもなく研究するということは社会的な活動であり、このような人間同士の直接的な触れ合いが
基本的であると思うからです。グローバルなネットワークがいかに発達しようともこのことに変わりはありません。
この意味でも、著書などを通して、過去、現在そして未来の人々との出会いの場を提供する
大学の図書館の重要性を思わずにはおられません。
学生の皆さんにもぜひ図書館を精いっぱい利用していただきたいと切に思うのです。
世界中の多くのすぐれた研究者と、まずはその著作を通じて、心ゆくまで語り合う贅沢を楽しんでください。
そして、将来の、大いなる出会いの可能性を想像し楽しんでみてください。
 さて、私は本年6月末をもって附属図書館長の職を辞しました。
2年間の任期でしたが、皆さまのご協力を得て何とか最後まで務めることができました。
心より感謝申し上げます。名工大の図書館が今後ますます充実し発展しますよう、
これからは一図書館利用者として応援いたします。