名古屋工業大学附属図書館報「@Library」

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宮大工 西岡 常一

西岡 常一 1908〜1995 
  法隆寺の解体修理や薬師寺の再建などに携わる。
  木にこだわり、古(いにしえ)の技法を後世に残そうとした人。


奈良の薬師寺 西塔の再建を行った時の話です。
創建当時のまま現存する東塔と、西岡氏が再建した西塔では、
塔の高さと屋根の角度が違います。
そのことを聞かれた西岡氏は、
「百年たったら地盤が沈み、屋根を支える垂木が下り、東塔と同じになる」
と答えたそうです。
一見でたらめのようですが、
自身の著作や彼を語る著作を読んでみると、
本当に五百年後には同じになるのだろう、
と納得する説得力があります。
今立っているものと同じものを再建するのではなく、
時の経過を考慮したものを再建する…。
描いているスケールが違います。


だからといって、新しい技術を否定しているわけでも、古いものが良いと言っているわけでもありません。


『古いだけがいいんやったら、そこに落ちてる石ころのほうが古いんや。
法隆寺は千三百五十年、石ころは何億年や。
だから、古いからここを見に来るんじやなくて、われわれの祖先である飛鳥時代の人たちが、
建築物にどう取り組んだか、人間の魂と自然を見事に合作させたものが法隆寺や、
ということを知って見に来てもらいたいんや。』  (西岡常一 「木に学べ」 小学館,2003) 


木は単なる材料(もの)ではなく、
それぞれが個性や癖を持つ生命体であると捉え、
木との会話をもとに適材適所に配置しバランスを保つ。
この考え方は、個を均一化し、無理やり枠にはめて構造物を作る、
という現代の考え方とは全く違います。

どちらが良いのか私にはわかりませんが、
時の流れが答えを出しているような気がします。
みなさんはどう考えますか?

機会があったら、是非この人の本を読んでみてください。
古(いにしえ)の先人たちの技法と新しいテクノロジ−との融合…。
できたら本当にすばらしいことだと思います。



参考文献
宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み.日本経済新聞社,2005,268p]